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成年後見制度は使えるか

前回、成年後見制度というものをご紹介しました。今回はこの制度が、働けないお子さんを抱えるご家族にとって活用できるものなのかを考えます。

法務省の「成年後見制度・成年後見登記制度」のサイトでは、成年後見の事例として、本人が統合失調症のケースを紹介しています。統合失調症の子が母親と暮らしていたものの、母親が亡くなり、唯一の親族である叔母が後見の申立てをしました。成年後見人には司法書士の人が選ばれ、本人の生活を財産管理の面からサポートします。

このように、成年後見、保佐、補助などの法定後見は、家庭裁判所が成年後見人(または保佐人、補助人)を選びます。弁護士や司法書士、行政書士などの法律の専門家や、社会福祉士などの福祉の専門家などが選ばれることが多いようです。成年後見人になるのに、資格は必要ありません。場合によっては、一般の市民である市民後見人が選ばれる場合もあります。

家庭裁判所は、本人の状況に応じて成年後見人を選定します。財産の管理などに法律的な知識が必要になりそうなケースでは、法律の専門家が選ばれることが多いです。福祉の知識が必要な場合は社会福祉士、金銭面や介護に特に問題がなく、本人に寄り添う人が必要な場合には市民後見人が選ばれます。一般市民とはいっても、各自治体で研修などを受けて、自治体のサポート期間に登録されている人が選ばれます。後見活動をサポートするグループとして活動している団体から選ばれることもあります。

成年後見の申立てでは、後見人の希望を出すことができます。親や子など、親族が後見人となることを希望することもできます。家庭裁判所は、他の親族にヒアリングをして、問題がないか判断します。以前は親族が選ばれるケースが多かったのですが、徐々にその比率が下がっています。親族が後見人に就任すると、お金の使い方にあいまいさが生じてしまうケースが多いためです。最近では、本人の財産が500万円を超える場合は、親族ではない専門家が選ばれるケースが多いようです。また、親族が後見人に就任した場合は、「後見制度支援信託」の利用を家庭裁判所から求められるケースもあります。「後見制度支援信託」については、また別の機会にご紹介したいと思いますが、毎月一定額を引き出すことができる貯蓄です。これを利用すると、成年後見人といえども、本人の財産を自由に引き出すことができなくなります。

専門家が後見人に選ばれた場合、選任後にはじめて本人や家族と会うことになります。会ってから後見人を交代することはできませんので、不安が伴います。しかし、弁護士や司法書士、社会福祉士なども、それらの団体で後見制度について研修を受けています。財産管理や契約の代行などは、本人の利益を最優先に考え、きちんと手続きを実行してくれるはずです。預金通帳や印鑑なども預けることになりますが、信頼して任せることが大切です。

後見制度には、財産管理だけでなく、本人の「身上監護」という仕事もあります。「身上監護」とは、本人の身のまわりのことに配慮して、生活面でのサポートを行うことです。

ただ単に、預貯金の管理を行うだけではありません。問題なく生活ができているかなど、時々訪ねて様子を見て、本人から話を聞くことが大切です。そして、問題があれば、本人の生活が改善されるように対応する必要があります。本人が一人暮らしであっても、施設に入居している場合でも同じです。本人の代わりになって、介護事業者などに改善を求めることもあります。なお、本人の生活改善のために手配をするのであって、後見人が直接に介護などを行うわけではありません。介護事業者などを手配するなどして、サポートをするわけです。

さて、後見人の報酬はどのくらいになるのでしょうか。成年後見人(保佐人、補助人)などへの報酬は、家庭裁判所が本人の財産額を考慮しながら決めます。よって、不当に高い金額を吹っ掛けられるようなことはありません。支払うのは1年ごとなのですが、月額にすると、1~3万円程度が一般的です。さらに、成年後見人を監視する後見監督人もついた場合は、そちらにも報酬が必要になります。認知症高齢者などのように、5年ぐらいであれば、ある程度の金額で収まりますが、若い人が生涯にわたって利用するとなると、かなりの金額となります。後見制度が今一つ広がっていない理由に、報酬面での課題もあります。

デメリットとしては、一度選ばれた以上は、本人の判断の力が回復するのでもない限り、ずっと使い続けなければならない点です。本人所有の不動産など、まとまった財産を処分するために申立てをするケースも多いのですが、その売買が終わっても、ずっと利用し続けることになります。

後見人は年に一度、家庭裁判所に年間の報告をする必要があります。そのためにも、本人の支出はすべて記録を残し、領収書を保存しておく必要があります。たとえ親族が後見人になった場合でも必要になります。また、財産の使い方は本人の利益を優先させることが必要で、簡単に親族にお金を渡すことはできなくなります。この辺りが、後見制度の利用をためらわせる要因となるようです。

後見制度は利用を始めると、簡単にはやめられません。メリットとデメリットを十分に吟味して利用を検討することが大切です。

後見人の制度

本人が、財産の管理ができない、悪徳業者にだまされるのではないか心配だ、という場合に、別な人に財産を管理してもらうのが、「成年後見制度」です。働けない子どもを持つご家族にとって利用可能なのか、見てみましょう。

まず、後見とは何か、確認してみましょう。精神上の障害により、判断能力が欠けている人の財産を後見人が管理し、本人に代わって取引や契約をしてもらう制度です。本人がしてしまった不利な契約を後見人が取り消す場合もあります。未成年の子どもの財産を親が管理するもの後見ですが、ここでは成年後見制度を見ていきます。

成年後見は〝精神上の障害〟が制度利用の前提で、認知症や知的障害、精神障害などが対象になります。よって、「ひきこもり」というだけではこの制度は使えません。お子さんが利用する場合は、知的障害や精神障害と診断されていることが必要になります。ただ、財産を管理していた親が高齢になり、認知症となった場合に利用する可能性がありますので、ひきこもりにとってもかかわりのない制度ではありません。

利用方法としては、①本人(子)が利用する場合 と ②親が利用する場合 があります。本人が利用する場合は、本人の財産管理や契約代理を後見人にしてもらうことになります。一般的には、親が本人の財産を管理し、取引を代理することが多いと思います。後見制度は、本人名義でまとまった金額の財産や不動産があり、それを処分する場合などに利用をすることが多いようです。

親が高齢になって判断能力が低下してきた場合は、子が代わって財産管をすることが多いのですが、子がひきこもりなどでそれがかなわない場合に、後見制度を利用することができます。

いずれにしても、法律行為(財産を処分したり、契約したり)は、本来は家族であっても代わって行うことはできません。しかし、日常的には家族が行うことが一般的で、金額が大きくなければそれほど問題ありません。ですから特に支障がなければ、わざわざ家庭裁判所に申立てをして、後見人を立てるほどのことはありません。しかし、大きな財産を取引する必要に迫られて、あわてて申立てをすることが少なくありません。不動産など、大きな取引では、相手方から求められることもあります。

 

成年後見制度は大きく分けて、「任意後見」と「法定後見」があります。「任意後見」は、本人が判断能力のあるうちに、後見人になってもらいたい人と後見契約を結んでおきます。後見契約は公正証書にしておきます。そして、本人の判断能力がなくなった段階で、家庭裁判所に申立てます。家庭裁判所が後見監督人を選任すると、任意後見人による後見活動がスタートします。本人の財産を任意後見人が管理し、さらに任意後見人を、後見監督人がチェックするようになっています。主に高齢者が認知症に備えておくのに利用されています。お子さんがひきこもりで、自分が認知症になった場合にお子さんの支援が期待できない場合などに向いています。管理や代理をしてもらう範囲は明確に決めておきます。事前に契約を結んでおくわけですから、自分の信頼できる人に依頼できるので安心できます。あわせてひきこもりの子の様子も見てもらうぐらいはお願いできるかもしれませんが、子の財産管理まではお願いできません。

「法定後見」は、本人に判断能力がない場合に、家族や市区町村長などが家庭裁判所に申立てをすると、家庭裁判所が後見人を選んで、後見活動がスタートします。後見人は家庭裁判所が選任するのですが、申立ての時点で希望を出すことはできます。親や子、兄弟姉妹などの家族が選ばれることもあれば、弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門家が選ばれることもあります。後見人には特に資格は必要ないため、士業などの専門家ではない市民後見人が選ばれるケースもあります。

法定後見は、本人の判断能力の状況で、3つのランクに分かれています。財産に関するすべての行為を代理するのが「成年後見人」です。財産の管理、契約の代理の他に、本人が結んだ不利な契約を取り消すこともできます。裁判所が定めた一定の契約を代理したり、取り消したりすることができるのが「保佐人」です。さらに障害の程度が小さい場合は「補助人」が選任されます。いずれも場合も、日常生活での取引については、後から取り消すことはできません。

ひきこもりの原因

ひきこもり家族の家計相談をしていますので、多くのご家族とお会いしました。私たちがお会いするのは、たいてい親や兄弟姉妹です。ご相談の面談では、現在のご家族の状況を伺います。今の状況に至った経緯を伺うこともあります。

私(村井)はひきこもりのご家族のご相談を受け始めた頃は、比較的余裕のあるご家庭ばかりではないかと思っていました。
「仕事をしないで引きこもっていられるぐらいなのだから、裕福な家庭の子どもだろう。。。」

世間一般によくある思い込みです。
ところが、実際に相談を受けてみると、そうばかりではありませんでした。経済状況が厳しいご家庭のお子さんもいました。働かないと生活が苦しい状況であっても、ひきこもりになる時はなるのだと思いました。傾向としても、必ずしも裕福な家庭が多いとも言えず、ご家庭の経済的な余裕が、ひきこもりを誘発しているわけではないと感じます。

両親ともにいるご家庭もあれば、ひとり親のご家庭もあります。比較分析したわけではありませんが、おそらく一般的な傾向とそれほど変わりはないと思います。

兄弟姉妹がいるか、一人っ子かについても、どちらもいて、特に明確な傾向は感じられません。そして、ひきこもりではない子は社会生活に問題なく、自立して家庭を築いている場合もあれば、子どもが複数でひきこもり、あるいはそれに近い状態だと伺うこともあります。兄弟姉妹の存在が、ひきこもりに影響しているのかどうか私にはわかりませんが、特別な印象はありません。

発達障害など、もともと本人の対人関係に支障があったという場合もありますが、そういうケースばかりというわけではありません。お話を伺うと、比較的、繊細で神経質なお子さんが多いように感じはします。しかし、誰でも多かれ少なかれ、神経質な面は持っているはずですから、それがひきこもりの原因と言えるのかどうか。。。

都市部と地方でも明確な違いはないと思います。私たちへの相談が多いのは、首都圏と関西圏ですが、そもそもこの地域の人口が多いことと、私たちの面談場所がこの地域に偏っているためです。地方の家族会や精神保健福祉センターなどから講演の依頼をいただくこともあり、どの地域でもご家族や支援者が集まり、いろいろな状況を伺います。

浪費家の子どももいれば、ほとんどお金を使わない子どももいます。本人の金遣いの傾向は、将来の資金計画に大きく影響します。あまりお金を使わない子の方が、働かないでも生きていける資金計画が立てやすくなります。しかし、生涯働かなくても生活できるから引きこもっている、というわけではけっしてありません。将来の資金状況まで計算してひきこもりを始めた、というケースは聞いたことがありません。逆にどう考えても厳しい状況でも、ひきこりになることはありえるわけです。

少なくとも、私がお話を伺っている限りでは、ひきこもりのご家族はそれぞれがさまざまで、明確な傾向は見えません。このサイトには「ご相談を依頼されるご家族の傾向」という分析を掲載していますが、これはあくまで相談を依頼される人の傾向であって、ひきこもりのご家族の傾向ではありません。

私は精神分析の専門家ではありませんので明確には言えませんが、面談の経験からは、子どもがひきこもりになる原因は「わからない」というのが正直なところです。何が悪かったのか、育て方が間違っていたのか、と考えても、意味はないのではないかと思います。

それよりも、これからどうしていくか、を考えていくことが大切です。

ファイナンシャル・プランナーへのご相談では、これからのご家族の資金計画を考えます。どのようにしていけば、親亡き後も、ひきこもりのお子さんが生涯、生活していけるかをシミュレーションしていきます。お子さんの状況、家族の状況、資産の状況。これらはすべて〝与えられた材料〟であり、その材料を組み合わせて、将来の計画を作ります。ご相談をしていく中で、前向きな気持ちになっていただければと思います。

 

「ご希望の担当者」を選べるようになりました

「働けない子どものお金を考える会」のファイナンシャル・プランナーにご相談を希望される際は、このサイトの お問合せ 画面から申し込むことができます。
ご相談の申込み画面に、「ご希望の担当者」の選択欄ができました。
ご相談の際には、選んだ担当者が応対いたします。状況によっては、ご希望とは別の者が担当することもありますが、ご容赦ください。特に希望がない場合は「特になし」を選ぶこともできます。

ファイナンシャル・プランナーに相談をしたことがない方がほとんどだと思います。それだけに、少し不安があるかもしれません。ご家庭の状況を恥ずかしいと考える方もいるかもしれません。
でもご安心ください。多くの方が「勇気を出して、相談してよかった」と言われます。
ご相談料は、1時間につき1万円(別途消費税)。その後は30分ごとに5,000円(別途消費税)となっています。担当者によっては別料金で、将来の資金状況を見通す「キャッシュ・フロー表」の作成を承ります。(面談場所によっては、交通費がかかる場合があります。)

コロナ禍でも、ご相談のご依頼は続いています。Zoomなど、インターネットを介した面談も増えていますが、依然として直にお会いしてのご相談も少なくありません。やはり、直接お会いすることで得られる安心感は小さくないようです。

私たちのメンバーの面談場所は、東京・神奈川と京都と、偏っています。一方、お子様の将来が心配で悩んでいる方は全国にいます。
私たちもコロナ禍を契機としてZoom、skypeなどのオンラインでご相談できる体制を拡充しています。このおかげで、面談での接触を減らすだけでなく、地方や遠隔地の方もご相談がしやすくなりました。郵送でのご相談もやっています。もちろん、直接お会いしてのご相談も、感染対策に配慮しながら継続しています。

私たち「働けない子どものお金を考える会」は、会社やNPO法人などの団体ではなく、有志のファイナンシャル・プランナーが個人で集まって、ご相談の体制を運営しています。
メンバーリストそれだけに、統一された方針があるわけではありません。しかし、それでも基本的な考え方にそれほど違いはありません。働けないお子様やご家族の状況を尊重しながら、どうしたらできるだけ良い人生を送ることができるかを、家計の面から考えます。
ご相談場所やご相談方法から、ご都合のよい担当者を選んでください。迷われたら「特になし」を選んでいただいて構いません。

担当者の雰囲気を見たい場合は メンバー紹介 をご覧ください。

 

家計改善の考え方②-固定費と変動費

家計を改善する方法として、効果が確実で失敗がないのが支出の削減です。ところが、「なかなか難しい」という声をいただくことが少なくありません。そこでご相談者にどのような削減をしたか聞いてみると、「家計の見直し」のポイントが見えてきました。

Aさんはスーパーでの買い物で、ムダ遣いをやめるように心掛けたそうです。それまでは気軽に買い物かごに入れていましたが、いちいち吟味してできる限り購入を抑えるようにしました。その結果、レジでの支払いが10%ぐらい減少しました。しかし年間の支出に変化はなかったそうです。Aさんいわく「いつも節約をしているとストレスが溜まって、たまに衝動買いをしてしまうんですよね」。

Bさんはそれまで使っていたスマホを格安スマホに替えました。料金は、以前は月額6,000円前後でしたが、4,000円程度まで引き下げることができました。毎月2,000円の節約は、確実に続いていきますので、数年も続けばけっこうな金額になります。Bさんいわく「解約などの手続きが手間でしたが、その後の使い勝手は悪くありません」。

「家計の見直し」というと、たいていの人は毎日の買い物で節約をしようとします。手軽に始められ、すぐに効果が表れますが、長続きさせるのが大変です。日常の食費などは、毎月金額が変わる変動費と言えるでしょう。削減しやすいのですが、常に忍耐を伴います。

それに対して、銀行口座からの引き落としなどで毎月定期的に発生する支出は固定費と言えます。こちらは削減をする際に、手続きなどの手間がかかりますが、一度実施をすると、その効果が長く続きます。あまり使っていないスポーツクラブの退会やケーブルテレビの解約なども同様です。

もちろん、いつも都合よく固定費を削れるとは限りませんが、なにか減らせるものがないか検討してみることは大切です。少なくとも、毎日の食費で節約をするよりは優先して取り組むべき、見直しポイントだと考えます。

2021.4.5記

2021年4月25日webセミナーのご案内(無料)

こちらのセミナーは、盛況のうちに終了しました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

メンバーの村井が講師をする、オンラインセミナーをご紹介します。
誰でも参加でき、受講料は無料ですので、ぜひご参加ください。
(働けない子どもに関する内容ではありません。)

4月25日(日)の午後5時からです。

テーマは『FP視点で見る介護&葬儀・相続』

昨年に体験した、父親の介護、そして葬儀と相続を、身内の恥をさらして材料にします!
体験したからわかった、一般的な説明とはちょっと違った内容です。
親がまだ生きている方は必見です!?
介護や相続に関心のある方にも参考になるはずです。

主な内容:・やっかいなのは、認知症だけではなかった
     ・私は容疑者になった
     ・生命保険のメリットはウソだった


【NPO法人 わぁくらいふさぽーたー 第3回 オンラインセミナー】

●開催日時:2021年4月25日(日)PM 5:00〜6:30(PM 4:50開場予定)

●タイトル:『FP視点で見る介護&葬儀・相続』

●講師:村井英一(ファイナンシャル・プランナー)

●場所:Zoomを使い、オンラインにて開催します。
PC、タブレット、スマートフォンなどをご用意の上、インターネット環境が整った場所でご参加ください。
   ※メール内容を確認後、参加申込受領の返信とともにZoomのアクセスURLをお伝えします。

●参加費:無料

●参加対象:どなたでもご参加いただけます。

●お申し込み方法:下記の必要事項を明記の上、 
 info@work-life-supporter.org
 までメールをお送りください。

●必要事項
・お名前(漢字・ふりがな)
・お電話番号(当日の接続不具合等があった時のため)
・メールアドレス
・4/25オンラインセミナーに参加希望である旨添えてください。

※Zoomが初めての方、不安な方は、事前に接続テストも承りますので、ご希望の方は合わせてご記入ください。

●主催:NPO法人わぁくらいふさぽーたー

家計改善の考え方①-経常と特別

働けない子どもをお持ちのご家族に限らず、多くのご家族の家計相談を受けています。基本的に私(村井)によるご相談の受け方は、今の状況を伺って将来の状況をシミュレーションする分析手法です。
将来の家計状況をシミュレーションすると、現在は問題なくても、将来に状況が厳しくなるケースは少なくありません。特にお子さんが働けない場合は、ご本人に収入がない前提でシミュレーションしていきますので、貯蓄が不足してしまうことが多々あります。そのような場合は、なんとか家計の破たんを回避できるように、改善策を検討します。
家計の改善策にはいろいろな方策がありまずが、大きく分けると、3つになります。
① 収入を増やす   ② 支出を減らす   ③ 資産を増やす

このうち、「① 収入を増やす」は、効果は大きいのですが、簡単にできるわけではありません。働けないお子さんが働けるようになり、収入が得られるようになると、家計は改善しますが、期待だけでは正しい分析になりません。(シミュレーションの中で、その可能性を検討することはあります。)

「③ 資産を増やす」もできれば楽ですが、簡単なことではありません。この方法をお勧めするファイナンシャル・プランナーも少なくないのですが、これをやると、逆に資産を減らしてしまうリスクも抱えることになります。資産運用で資産が減ってしまった場合も十分に考慮しておかなければなりません。

「② 支出を減らす」は、〝節約〟をするわけですので、苦痛を伴いますが、もっとも安全確実です。資産運用では失敗して資産を減らしてしまうこともありますが、節約では失敗して支出が増えてしまうことはありません。節約したら節約しただけ、確実に財産が増えることになります。

というわけで私のご相談では、「② 支出を減らす」を中心に、「① 収入を増やす」と「③ 資産を増やす」も含めて改善策を考えます。

もっとも「② 支出を減らす」といっても、やみくもに「節約!節約!」と思っても、なかなか家計を改善する状況にはなりません。どこから手を付けていけばいいのでしょうか。

家計の支出を振り返ると、「毎月の経常的な支出」と「不定期な特別の支出」に分けられます。「毎月の経常的な支出」は、毎月発生する支出で、食費や水道光熱費、電話代などです。「不定期な特別の支出」は、家電製品の購入や、旅行の費用、時々支出する被服費などです。レジャーの支出でも、近くのショッピングセンターでの外食などは「毎月の経常的な支出」になりますし、年に1~2度の家族旅行なら「不定期な特別の支出」になります。ですから、厳密な区分けはなく、感覚的に分けていただいたので構いません。
ご相談の際には、シミュレーションをするために現状の家計支出を伺います。すると、たいていは「毎月の経常的な支出」については比較的正確に金額をお答えいただけるのですが、「不定期な特別の支出」についての漏れが多くなります。年に1~2回だったり、数年に1回ということもあります。しかし、金額が大きいことが多いので、これが抜け落ちてしまうと、正確なシミュレーションができません。将来の予想が、実際の状況よりもかなり良くなってしまいます。

詳しく伺っていくと、「ああ、そう言えば。。。」と支出が思い出され、実際の支出に近づいていきます。

家計の改善策を考える上では、この「不定期な特別の支出」をどう節約するかが重要なポイントになります。「毎月の経常的な支出」の削減から考える人が多いのですが、私は「不定期な特別の支出」の削減から考えていただくようにお話しています。その理由は

  1. 金額が大きいことが多い
  2. 具体的な改善点が明確で効果が表れやすい

ということにあります。
海外旅行、自動車の買い替え、自宅の修繕。。。

これらはいずれも数十万円から数百万円もします。この頻度を減らして、1回でも回数を少なくすれば、それだけで数十万円~数百万円が節約できます。毎日、節約に励んでも、それほど大きな金額にはなりません。
楽しみをまったくなくすわけではありません。その頻度を減らすだけで、大きな節約効果があります。

ただ、お子さんが働けないご家庭では、「不定期な特別の支出」自体がほとんどなく、ここで改善する余地がない場合も少なくありません。その場合の改善策は。。。次回にご紹介いたします。

将来まで家計が破たんしないポイント

お子さんが働けない場合は、ご両親の収入で生活していくことになります。親が高齢になってもご健在なうちは、親の年金で生活しているケースが一般的です。そして、親亡き後は親が遺してくれた資産を取り崩して生活していくことになります。

ご本人が65歳になると、ご本人に年金が支給されるようになりますが、国民年金だけでは生活していくのは難しいです。ご本人の老後まで、親の資産をできるだけ残して、生涯を全うできるようにしたいものです。

貯蓄が不足して、生活費もままならないようであれば、生活保護の申請も検討したいところです。しかし、それは最後の手段であり、できればご自身の貯蓄を使って生活していきたいものです。

そうなると、子どもが85歳から90歳ぐらいまで貯蓄が維持できるようになる必要があります。一般に平均寿命は、男性は80歳ぐらい、女性は87歳ぐらいと言われていますが、実際はもう少し長く生きることを想定しておかなければなりません。何歳まで生きるかは誰にもわからないからです。

このように言うと、「働かないで生きていく、なんて親が資産家でもなければ無理なのではないか」と思われる方も多いと思います。確かに、ある程度の貯蓄を遺してやらないと難しいのですが、意外となんとかなるものです。けっして「資産家」でなければ難しいということはありません。私たちは、働けないお子さんが、親亡き後も賄えるかをシミュレーションすることが多いのですが、「余裕で生活していける」とはいかなくても、「工夫次第でなんとかなりそうだ」というケースは少なくありません。

子どもの85歳までを考えるとしても、かなりの長時間となります。今、子どもが50歳だとしてもあと35年間あります。子どもが30歳であれば、55年間となります。(私たちは、このような長期間の家計シミュレーションをしています。)

分析を続けているうちに、あることに気がつきました。このように長期間の分析では、現在の時点での貯蓄額の多い少ない、ということより支出の状況によって将来の状況が大きく異なってくる、ということです。貯蓄の残高よりも支出の多寡のほうが、将来の家計状況に影響を与えるのです。

現時点での貯蓄額が多くても、支出が多いと、貯蓄の減り方が大きく、遅かれ早かれ貯蓄が枯渇してしまいます。そして30年~50年という長期間では「不足額」がかなりの金額になってしまいます。

一方、現時点での貯蓄額が少なくても、支出が少ない場合は、貯蓄の減り方が小さく、長い間貯蓄が維持できます。お子さんが80代、90代になっても貯蓄が枯渇する心配が少なく、長生きしても不安がなくなります。

では、支出を抑えるポイントはどこでしょうか?
私が多くのご家庭の分析をして感じるポイントは次の2点です。

  1. ご家族の生活スタイル
  2. ご本人の金遣い

ひきこもりのお子さんがいるご家庭は、比較的生活スタイルが堅実なご家庭が多いです。お子さんがご自宅に閉じこもっていると、なかなか旅行にも行きづらいですし、趣味にお金をかける気にもなりにくいでしょう。しかし、日常の買い物や自家用車の買い替えに資金をつぎ込んでいる場合は、収入が多く、資産が多いご家庭でも要注意です。支出することが生活スタイルになってしまっています。

お子さんのほうもあまりお金を使わない傾向があります。部屋に閉じこもっており、あまりどころかほとんど支出をしないお子さんも少なくありません。それはそれで望ましいことではありませんので、ある程度は使ってくれた方が安心です。外に出る、人と交わるということはお金も使うことになります。「お子さんにお金を使わせるために、あえて多めにお小遣いを与えた方がよい」という専門家の方もいます。

しかし、浪費癖があるようでは問題です。あまり活動的でないお子さんでも、金遣いが荒いケースはあります。ネットでなんでも購入できる時代ですので、すぐにいろいろなものを買ってしまうひきこもりのお子さんもいます。購入すること自体がストレス発散になってしまうと、際限がありません。

「生活スタイル」や「金遣い」は習慣的なものですので、これを変えるのは簡単ではありません。時間をかけて、少しずつ直していくことが大切です。

新版『ひきこもりのライフプラン―「親亡き後」をどうするか』

出版されたのが昨年(2020年)4月ですので、今からご紹介するのも遅いのですが、今までご紹介していませんでしたので、この機会にご紹介させていただきます。
岩波ブックレット『ひきこもりのライフプランー「親亡き後」をどうするか』が2012年6月のことでした。当時はまだ、今ほどにはひきこもりが知られてはおらず、一部の若者の現象と思われていました。ひきこもりが、40代、50代になっても続くということが認識されていなかったのです。

ひきこもり支援の第一人者である精神科医の斎藤環氏と畠中雅子の共著で、読みやすいブックレットという形で出版されました。筑波大学の齋藤先生による「ひきこもりの理解と対応」で支援の考え方を説明し、畠中の「ひきこもりのライフプラン」で生活設計の方法をご紹介しています。
生涯、就業しないで生きていく、というサバイバルプランの考え方が、初めて紹介されていました。それまでは、ひきこもり支援といえば、「就業すること」が目標にされがちでしたが、あえて就業しないライフプランが提示されました。けっして回復をあきらめるのではなく、「なんとかなる」という安心感を持つことが社会へと踏み出すきっかけになるという考え方です。

新版「ひきこもりのライフプラン」2020年4月に、内容を一部改訂して「新版」として再び出版されました。基本的な考え方は同じで、最近のトピックスが加えられていますので、これから読む方はこちらを購入されてください。「ひきこもりのライフプラン」の章では、「家族信託」が加わりました。親亡き後の財産管理の手法として、注目を集めています。

ブックレットですので、ページ数は112ページと少なく、価格は720円(税別)。簡単に読めますので、ぜひご覧ください。
※旧版と間違わないように、検索する際は「新版ひきこもりのライフプラン」と入力されてください。
アマゾンでの購入はこちらから

障害年金が受給できる障害の程度

障害があり、働けない状況の人を支える制度として障害年金があります。障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。いずれも、障害の状態が基準に該当する場合に支給されます。精神的な障害も対象であり、請求をすると、障害の程度に応じて、支給の可否が判定されます。ただ、精神的な障害の場合は、身体的な障害に比べて、障害の程度の判断が難しい傾向があります。症状に波があり、状態や数値で客観的に測れない部分があるからです。ここでは、公表されている資料から、参考になる目安をご紹介します。

障害基礎年金は、障害等級が1級と2級の人に支給されます。障害厚生年金は、初診日に厚生年金の被保険者であった人(一般にお勤めの人)で、障害等級が1級、2級、3級の人に支給されます。障害等級は障害の程度を示す区分けで、障害年金の請求をすると、医師の診断書などに基づいて審査されて決められます。障害者手帳の等級とは異なります。

障害の程度は、1級は「日常生活の用を弁ずることを不可能ならしめる」程度とされています。2級は、「日常生活が著しい制限を受ける」または「日常生活に著しい制限を加えることを必要とする」程度とされています。3級は、「労働が著しい制限を受ける」「労働に著しい制限を加えることを必要とする」程度の障害を残すもの、または「労働が制限を受ける」「労働に制限を加えることを必要とする」程度の障害を有するもの、とされています。これでは意味がわかりませんので、もう少し具体的に見ていきましょう。

障害年金の支給対象となる精神の障害は、次のものです。

  • 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
  • 気分(感情)障害(うつ病、双極性障害など)
  • 知的障害
  • 発達障害
  • 症状性を含む器質性精神障害(認知症、せん妄など)
  • てんかん

障害年金の請求にあたっては、年金請求書、受診状況等証明書、病歴・就労状況等申立書などとともに、医師の診断書を提出します。医師の診断書は、原則として現在受診している主治医に書いてもらいます。障害の程度の判定には、医師の診断書が重要になります。

医師の診断書には「日常生活の能力の程度」と「日常生活の能力の判定」という項目があり、これらの組み合わせが障害等級の目安となります。それに、①病状、②状態像、③療養状況、④生活環境、⑤就労状況を考慮して、総合的に判定されます。

「日常生活の能力の程度」の項目は、以下の5つの段階からの選択となっています。

  1. 精神障害を認めるが、社会生活は普通にできる。
  2. 精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要である。
  3. 精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
  4. 精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
  5. 精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時援助が必要である。

例えば、5と4に該当する場合、「日常生活の能力の判定」との組み合わせで、1級または2級が目安となります。同様に3は2級または3級が目安とされています。そして、2は3級または非該当、1は非該当が目安とされています。この目安に、他の項目を考慮して総合的に判定されますので、一概には言えません。

主治医の先生に診断書を書いていただきますので、障害年金の請求には次の点が重要になります。まずは、定期的に病院に通い、医師の診断を受けていることです。主治医の先生も、いきなりの受診で診断書の作成を依頼されても書けるものではありません。一定の期間の通院を条件としている先生もいます。本人が通えない場合でも、家族が定期的に状況報告と対応相談をするなどをしておいた方がよいでしょう。

そして先生に普段の状況、特に悪い時の状況を正しく伝えておくことも大切です。本人が通院できる時は比較的状態が良い時ですので、主治医の先生に正確な状態をお伝えしておく必要があります。さらに主治医の先生に、障害年金請求する予定であることも話しておくとよいでしょう。その際「現在の状態は障害年金の級で何級くらいになりそうか?」ということを医師に聞いてみるとよいでしょう。医師から明確な答えが返ってこないかもしれませんが「請求をしてみてはどうですか?」や「症状は軽めなので、もう少し様子を見てからにしましょう」といった返事はもらえます。

ご自身での請求が心配でしたら、障害年金の請求になれた社会保険労務士に依頼するのもよいでしょう。請求に必要な書類をすべて揃えてもらうことができます。