「Ⅳ.ひきこもり、障碍を考える」カテゴリーアーカイブ

働けない子どもはさまざまです

このサイトを運営している私たちの会(と言っても法人格があるわけではなく、単なる任意団体です。)の名前は「働けない子どものお金を考える会」といいます。

〝子ども〟が大人になっても、仕事に就くことができない、仕事で収入を得ることができない、というご家庭に対して、経済的な面でのご相談を受け、アドバイスをしています。

お子さんが「ひきこもり」である場合が多いのですが、子どもが働けない原因は、そればかりではありません。障害や病気など、他にもいろいろな原因があります。私たちの会では、そのすべてを対象に、ご相談に応じています。

お子さんが仕事で収入を得られない、という面は共通していますので、基本的な考え方は同じです。働けない子は親と同居していることが多いので、親がご存命中は親と子の家計を一体のものとして、貯蓄を維持していく方法を考えます。親亡き後は、親が遺した資産を使って生計維持を図ります。いかにして、長く安定して生活を送ることができるかを考えます。もちろん、ご本人が少しでも収入を得られれば、プラスに働きます。

ただ、働けない原因や状況によって、障害年金を受けられるか、行政の支援を受けられるかが違ってきます。それによって、将来の状況はかなり違います。その点を留意しながら、ご本人にとってより良い選択を、ご一緒に考えていきます。

ここでは、お子さんが働けない要因の主なものを見ていきます。

 

身体障碍

生まれつき身体に障碍がある、あるいは子供のころに障碍なった場合は、ほとんどが親と同居し、親の家計で生活を送っています。大人になってから障碍となった場合でも、結婚前であれば、親と同居で同一生計である場合が少なくありません。しかし、その程度や状況にもよりますが、障碍者枠での求人は多く、仕事に就く人も多くなっています。また、障害年金の対象となるケースもあり、ある程度は自立した生活が送れることが多いでしょう。

 

知的障碍

経済的な面だけでなく、生活面での支援が欠かせません。ほとんどは子どものころからずっと親が支援をしてきましたので、親亡き後の生活を心配する親は少なくありません。しかし、知的障害は福祉の歴史が長く、比較的公的支援が充実している傾向があります。経済面だけでなく生活面でも、親亡き後にどのように支援を受けながら生活していくかを検討することが重要になります。

 

発達障碍

「対人関係が苦手なだけ」と誤解されてきた人も少なくないでしょう。人によっては、大人になって、就業してから初めて診断される人もいるようです。社会の理解も十分でなく、なかなか支援を受けられないケースもあるようです。仕事が長続きせず、経済的に厳しいことや、浪費や金銭管理が苦手なケースもあるようです。経済的な面では時間をかけて根気よく支援していくことが大切です。

 

精神疾患

症状に波が大きく、公的な支援の対象になりにくい面があります。症状が落ち着いているときは自立した生活を送れて、仕事もできますが、悪い時には支援すら受け入れられないこともあります。疾患(病気)になりますので、継続的に医師の治療を受けることが大切になります。経済的な支援を受けるのにも、治療を受けていることが前提になります。

 

難病

多くの難病がありますが、症例数が少なく、効果的な治療法が確立されていないことも少なくありません。病名がわかるまでに、長い年月がかかった人もいます。それまでの間は、周囲の理解が得られず、精神的にも経済的にも苦しい状況が続きます。病名によって、公的な支援の対象になる場合とならない場合があり、経済的には大きな差があります。厚生労働省の施策が注目されます。

 

晩期合併症

小児がんを克服したあとに、知的あるいは身体的な面で障碍が残ることがあります。それを「晩期合併症」といいます。小児がんの治療で、かなり強い治療をした後遺症とされています。かつては小児がんを克服することが難しかったため、対象となる人があまりいませんでした。医療の進歩で小児がんから回復するようになり、それとともに増えてきた症状です。一般の人々の理解と公的な支援の構築が求められます。

新型コロナとひきこもり

新型コロナ感染症の影響が長引いています。世界各地で再び感染が拡大し、フランスやドイツではまた外出禁止の措置が取られました。日本でもインフルエンザが流行する冬を迎え、不安が高まっています。

4月から5月にかけては、ヨーロッパやアメリカの各地で外出禁止が実施され、日本でも緊急事態宣言で不要不急の外出は自粛するように要請されました。すべての人が自宅に引きこもるような状況でしたが、「ひきこもり」にとってはより深刻でした。コロナ禍による環境の変化が、ひきこもりに与えた状況を見てみます。

  • 家族も自宅に居るようになり、軋轢が増えた

リモートワークや休校で、今までは日中は外出していた家族が家に居ることが多くなりました。すると、ひきこもりの家族と接することが多くなり、余計なことを言ったり、いさかいが多くなりがちです。ひきこもりの本人は、仕事をしていないことを後ろめたく感じています。それだけに親の存在はプレッシャーで、ちょっとした一言に過剰に反応してしまうことがあります。また、社会生活を送っている兄弟姉妹に引け目を感じていることも多く、兄弟姉妹がいるだけでストレスを感じることもあります。雇用の継続に不安を感じている親が本人に干渉して関係がこじれることもあります。

  • ひきこもり支援が中断し、元に戻ってしまう

最近は自治体やボランティア団体による、ひきこもり支援も多くなっています。ひきこもりが安心して集うことができるフリースペースなどの居場所や就労支援事業所なども設けられています。せっかくそのような施設に通うようになったのに、新型コロナの感染防止のために、ほとんどの施設が休止や閉鎖となりました。その結果、再び自室にこもるようになると、外出できるようになるまでまた時間がかかってしまうこともあります。うまくいきかけていた社会復帰が1からやり直しになってしまいます。

  • 世間の不安な状況を感じ取り、さらに不安が募る

ひきこもりもネットやテレビで世間の状況は見ています。最近のニュースは、新型コロナの感染拡大を伝える、暗いものばかりです。社会が不安定な状況になると、ひきこもりも敏感にそれを感じ取り、自分の将来をますます悲観的に考えてしまうことがあります。その不安のために、家族に当たったり、自分の殻に閉じこもったりという行動に現れることがあります。

新型コロナの影響で、ひきこもりをめぐる状況はより深刻になっていると言えます。しかし、一方で多くの人が外出を自粛する状況がプラスに作用しているケースもあります。

  1. 自宅でひきこもっても不自然ではなくなった

以前であれば、子供と老人以外が日中に自宅に居るのは不自然でした。しかし緊急事態宣言による休校やリモートワークで、それが珍しくなくなりました。そのことでひきこもりでも居心地が良くなったとは言えませんが、日中の外出がしやすくなったのではないでしょうか。

  1. 外出自粛で、ひきこもりの疑似体験ができた

働いている人でも自宅待機が珍しくなくなりました。休業や失業で、不安を抱えながら自宅で過ごす人もいます。そのためにイライラしてしまうこともありますが、ひきこもりの疑似体験をすることで、家族がひきこもり本人の気持ちを理解することもあります。

  1. オンライン会議システムの普及

インターネットは、外出しての交流が難しいひきこもりにとって、外との交流の手段となりえます。対面しての会話は難しいものの、インターネットを通じての交流ならできるという人もいます。コロナ禍でオンライン会議システムがかなり広まりました。感染防止でイベントを中止していた支援団体がオンライン会議システムでミーティングを開くようになりました。そのおかげで、外部との交流ができるようになった人もいます。

やはりコロナ禍によるプラス面よりもマイナス面の方が大きいが現状ですが、プラス面をうまく活用したいものです。

名古屋大学の教授が、イギリスの研究者と共同で、コロナ禍によるひきこもりへの影響を論文で発表しています。それによると(英文ですので、原文を読んだわけではなく、内容を紹介した記事によると)、ひきこもりは日本だけでなく、海外でも増えているようです。コロナ禍での自粛解除後もそのまま引きこもる人が増えることが予想されています。今後はより充実した公的支援も求められます。