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障害年金が受給できる障害の程度

障害があり、働けない状況の人を支える制度として障害年金があります。障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。いずれも、障害の状態が基準に該当する場合に支給されます。精神的な障害も対象であり、請求をすると、障害の程度に応じて、支給の可否が判定されます。ただ、精神的な障害の場合は、身体的な障害に比べて、障害の程度の判断が難しい傾向があります。症状に波があり、状態や数値で客観的に測れない部分があるからです。ここでは、公表されている資料から、参考になる目安をご紹介します。

障害基礎年金は、障害等級が1級と2級の人に支給されます。障害厚生年金は、初診日に厚生年金の被保険者であった人(一般にお勤めの人)で、障害等級が1級、2級、3級の人に支給されます。障害等級は障害の程度を示す区分けで、障害年金の請求をすると、医師の診断書などに基づいて審査されて決められます。障害者手帳の等級とは異なります。

障害の程度は、1級は「日常生活の用を弁ずることを不可能ならしめる」程度とされています。2級は、「日常生活が著しい制限を受ける」または「日常生活に著しい制限を加えることを必要とする」程度とされています。3級は、「労働が著しい制限を受ける」「労働に著しい制限を加えることを必要とする」程度の障害を残すもの、または「労働が制限を受ける」「労働に制限を加えることを必要とする」程度の障害を有するもの、とされています。これでは意味がわかりませんので、もう少し具体的に見ていきましょう。

障害年金の支給対象となる精神の障害は、次のものです。

  • 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
  • 気分(感情)障害(うつ病、双極性障害など)
  • 知的障害
  • 発達障害
  • 症状性を含む器質性精神障害(認知症、せん妄など)
  • てんかん

障害年金の請求にあたっては、年金請求書、受診状況等証明書、病歴・就労状況等申立書などとともに、医師の診断書を提出します。医師の診断書は、原則として現在受診している主治医に書いてもらいます。障害の程度の判定には、医師の診断書が重要になります。

医師の診断書には「日常生活の能力の程度」と「日常生活の能力の判定」という項目があり、これらの組み合わせが障害等級の目安となります。それに、①病状、②状態像、③療養状況、④生活環境、⑤就労状況を考慮して、総合的に判定されます。

「日常生活の能力の程度」の項目は、以下の5つの段階からの選択となっています。

  1. 精神障害を認めるが、社会生活は普通にできる。
  2. 精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要である。
  3. 精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
  4. 精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
  5. 精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時援助が必要である。

例えば、5と4に該当する場合、「日常生活の能力の判定」との組み合わせで、1級または2級が目安となります。同様に3は2級または3級が目安とされています。そして、2は3級または非該当、1は非該当が目安とされています。この目安に、他の項目を考慮して総合的に判定されますので、一概には言えません。

主治医の先生に診断書を書いていただきますので、障害年金の請求には次の点が重要になります。まずは、定期的に病院に通い、医師の診断を受けていることです。主治医の先生も、いきなりの受診で診断書の作成を依頼されても書けるものではありません。一定の期間の通院を条件としている先生もいます。本人が通えない場合でも、家族が定期的に状況報告と対応相談をするなどをしておいた方がよいでしょう。

そして先生に普段の状況、特に悪い時の状況を正しく伝えておくことも大切です。本人が通院できる時は比較的状態が良い時ですので、主治医の先生に正確な状態をお伝えしておく必要があります。さらに主治医の先生に、障害年金請求する予定であることも話しておくとよいでしょう。その際「現在の状態は障害年金の級で何級くらいになりそうか?」ということを医師に聞いてみるとよいでしょう。医師から明確な答えが返ってこないかもしれませんが「請求をしてみてはどうですか?」や「症状は軽めなので、もう少し様子を見てからにしましょう」といった返事はもらえます。

ご自身での請求が心配でしたら、障害年金の請求になれた社会保険労務士に依頼するのもよいでしょう。請求に必要な書類をすべて揃えてもらうことができます。

ひきこもりと障害年金②

障害年金の大前提 保険料の納付要件について

障害年金を受給するための要件を、障害基礎年金で見てみましょう。まず大前提として、きちんと国民年金保険料を払っている、もしくは保険料の免除や納付猶予の手続きをしているということが条件となります。この条件を「保険料の納付要件」と言います。

保険料の未納があまりにも多すぎると「保険料の納付要件を満たさない」つまり「障害年金の請求がそもそもできない」といったことも起こり得るので注意しましょう。

保険料の納付要件について、もう少し詳しくみていきたいと思います。

まずは「初診日」が基準となります。初診日とは、その障害の原因となった病気やケガで、初めて医師等の診療を受けた日のことを言います。

初診日の前日において、20歳になった月から初診日の2カ月前までの期間のうち、保険料の納付、免除、猶予の期間が2/3以上あれば保険料の納付要件はクリアできます。

では、もし未納が多すぎた場合はもうだめなのでしょか?

実は未納が多すぎる人の救済措置で「保険料の納付要件の特例」というものがあります。

その特例とは次の通りです。

初診日が2026年4月1日前までであれば、初診日の前日において、初診日の2カ月前までの直近1年間に未納期間がまったくなければ納付要件はクリアできます、というものです。

ただし、通常の納付要件と特例には注意すべき点があります。それは「後出しはダメ」というものです。

キーワードは「初診日の前日において」というところ。

例えば医師等の診療を始めて受けた後、未納が多すぎることに気がついた。慌てて保険料をさかのぼって支払えるだけ支払った、といったようなケース。

この場合、初診日以降に保険料を支払っているので「初診日の前日時点では未納状態でしたよ。保険料を後出しで支払ってもダメですよ」となってしまうのです。

「この期間の保険料はいつ支払ったのか?」といったものは、すべて国で記録、管理されていますので、残念ながら嘘や言い訳は一切通用しません。

なので、初診日より前に未納状態を何とかしておかないと、保険料の納付要件がクリアできなかった、という最悪のケースも起こってしまう可能性もあります。

少なくとも特例の方くらいはクリアできるように、初めて病院に行く前に未納状態を解消しておくようにしておきたいものです。

なお、20歳になる前に医師等の診療を受けた人もいることでしょう。

国民年金の保険料を払うのは20歳からですので、この場合は保険料の納付要件は不要になります。納付要件以外の条件をすべて満たせば、初診日が20歳前の人でも20歳以降に障害基礎年金を受給することができます。

障害厚生年金は、初診日に厚生年金に加入していた人が対象です。その後に退職していても障害厚生年金の請求をすることになります。

厚生年金に加入していれば、給料から年金の保険料が天引きされるので、未納状態といったことはありません。ただし入社してすぐの人は、大学生の頃は何もせずに未納状態だった可能性もあるので注意が必要です。その場合は「初診日の前に」さかのぼって学生の納付猶予(学生納付特例)の手続きをしたり、未納分を支払ったりしておきましょう。なお、学生納付特例の手続きや未納分の支払いの時効は2年です。2年を過ぎると何もできなくなってしまうので、早めに手続きをしておきましょう。

ひきこもりと障害年金①

ひきこもりの家族会で講演をする機会がよくあります。私たちはファイナンシャル・プランナーですので、お話する内容は、ひきこもりの子どもの生活設計など、お金に関することが中心になります。

 

障害年金を受給しているか

その際、難しいのが、お子さんが障害年金を受給しているご家族と、そうでないご家族の両方がいることです。ひきこもりのお子さんのほとんどは、仕事での収入がありません。その点は共通していますが、障害年金についてはそれぞれ状況が異なります。

障害年金を受給しているかいないかでは、資金状況が大きく違います。今の収入が違うだけでなく、将来の状況にまで影響してきます。もちろん、受給している方が経済的には良くなります。

障害年金は「障害基礎年金」と「障害厚生年金」に分かれます。

障害基礎年金の対象になる人は、その障害で初めて医師等の診療を受けた日が次のいずれかに当てはまる場合です。

・国民年金加入中

・20歳前

・日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満の人で年金制度に加入していない

障害基礎年金は障害の程度によって1級と2級に分かれていて、金額は2級が年額78万1,700円、1級はその1.25倍の年額97万7,125円です。(2020年度)

障害厚生年金は、その障害で初めて医師等の診療を受けた日に厚生年金に加入していた人が対象で1級から3級まであります。金額はお勤めしていた期間の収入額などによって決まります。お勤めの人またはお勤めしていた人は、条件に合えば、障害基礎年金と障害厚生年金の両方がもらえます。

また、次の条件をすべて満たせば、障害年金生活者支援給付金が上乗せされてもらえます。

  • 障害基礎年金を受けていること
  • 本人の前年の所得が462万1,000円+扶養親族の数×38万円以下であること

給付金の額は次の通りです。

障害等級が2級の場合 月額5,030円(※)

障害等級が1級の場合 月額6,288円(※)

※いずれも2020年度の金額

本人の所得が462万円を超えることは稀ですから、ほとんどの人が給付金も合わせてもらえることになります。

 

仮に障害基礎年金の2級が認められた場合、いくらもらえるのでしょうか?

障害基礎年金の2級は年額で約78万円、月額にすると約6万5,000円です。

さらに障害年金生活者支援給付金が月額約5,000円。合わせて月額約7万円の収入になります。

月額約7万円で生活をしていくのは厳しいでしょうが、それでも生活の支えになることは確かです。障害年金は、条件に該当していれば一生もらえますので、10年間で840万円、20年間では1,680万円になります。障害年金を受給できるかいなかで、将来大きな違いとなることがおわかりいただけるでしょう。