新型コロナ感染症の影響が長引いています。世界各地で再び感染が拡大し、フランスやドイツではまた外出禁止の措置が取られました。日本でもインフルエンザが流行する冬を迎え、不安が高まっています。
4月から5月にかけては、ヨーロッパやアメリカの各地で外出禁止が実施され、日本でも緊急事態宣言で不要不急の外出は自粛するように要請されました。すべての人が自宅に引きこもるような状況でしたが、「ひきこもり」にとってはより深刻でした。コロナ禍による環境の変化が、ひきこもりに与えた状況を見てみます。
- 家族も自宅に居るようになり、軋轢が増えた
リモートワークや休校で、今までは日中は外出していた家族が家に居ることが多くなりました。すると、ひきこもりの家族と接することが多くなり、余計なことを言ったり、いさかいが多くなりがちです。ひきこもりの本人は、仕事をしていないことを後ろめたく感じています。それだけに親の存在はプレッシャーで、ちょっとした一言に過剰に反応してしまうことがあります。また、社会生活を送っている兄弟姉妹に引け目を感じていることも多く、兄弟姉妹がいるだけでストレスを感じることもあります。雇用の継続に不安を感じている親が本人に干渉して関係がこじれることもあります。
- ひきこもり支援が中断し、元に戻ってしまう
最近は自治体やボランティア団体による、ひきこもり支援も多くなっています。ひきこもりが安心して集うことができるフリースペースなどの居場所や就労支援事業所なども設けられています。せっかくそのような施設に通うようになったのに、新型コロナの感染防止のために、ほとんどの施設が休止や閉鎖となりました。その結果、再び自室にこもるようになると、外出できるようになるまでまた時間がかかってしまうこともあります。うまくいきかけていた社会復帰が1からやり直しになってしまいます。
- 世間の不安な状況を感じ取り、さらに不安が募る
ひきこもりもネットやテレビで世間の状況は見ています。最近のニュースは、新型コロナの感染拡大を伝える、暗いものばかりです。社会が不安定な状況になると、ひきこもりも敏感にそれを感じ取り、自分の将来をますます悲観的に考えてしまうことがあります。その不安のために、家族に当たったり、自分の殻に閉じこもったりという行動に現れることがあります。
新型コロナの影響で、ひきこもりをめぐる状況はより深刻になっていると言えます。しかし、一方で多くの人が外出を自粛する状況がプラスに作用しているケースもあります。
- 自宅でひきこもっても不自然ではなくなった
以前であれば、子供と老人以外が日中に自宅に居るのは不自然でした。しかし緊急事態宣言による休校やリモートワークで、それが珍しくなくなりました。そのことでひきこもりでも居心地が良くなったとは言えませんが、日中の外出がしやすくなったのではないでしょうか。
- 外出自粛で、ひきこもりの疑似体験ができた
働いている人でも自宅待機が珍しくなくなりました。休業や失業で、不安を抱えながら自宅で過ごす人もいます。そのためにイライラしてしまうこともありますが、ひきこもりの疑似体験をすることで、家族がひきこもり本人の気持ちを理解することもあります。
- オンライン会議システムの普及
インターネットは、外出しての交流が難しいひきこもりにとって、外との交流の手段となりえます。対面しての会話は難しいものの、インターネットを通じての交流ならできるという人もいます。コロナ禍でオンライン会議システムがかなり広まりました。感染防止でイベントを中止していた支援団体がオンライン会議システムでミーティングを開くようになりました。そのおかげで、外部との交流ができるようになった人もいます。
やはりコロナ禍によるプラス面よりもマイナス面の方が大きいが現状ですが、プラス面をうまく活用したいものです。
名古屋大学の教授が、イギリスの研究者と共同で、コロナ禍によるひきこもりへの影響を論文で発表しています。それによると(英文ですので、原文を読んだわけではなく、内容を紹介した記事によると)、ひきこもりは日本だけでなく、海外でも増えているようです。コロナ禍での自粛解除後もそのまま引きこもる人が増えることが予想されています。今後はより充実した公的支援も求められます。